ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2023.1.1 02:21

あけましておめでとう!

あけましておめでとうございます。
今年の「ゴー宣道場」、怒涛のエンタメ国民世論大爆発!
って勢いでやっていきましょう!
どうぞよろしくお願いします。

わが泉家は、カオス大爆発の年越しだった。
紅白歌合戦のさなかに、母が突然、寝室から
「誰か来てえーー!」

と叫ぶので、あわてて駆けつけると
「テレビが壊れてつかない」と。

弟が、ボタンやら線やらを点検して、電源を入れなおしたのだけど、
確かにウンともスンとも言わないので、

「これは壊れたね」

17年前に買ったテレビらしく、さすがに寿命かもしれないし、
買い替え時かもしれないね、などなど話しながら母のほうを振り返ると、
そこには、ゴールを奪われたキーパーのように、頭を抱えてベッドに
突っ伏し悶絶している母がいて、

「こんな、、、こんな大晦日にテレビが壊れるなんて、、、」

と苦渋の声を絞り出していた。

1993年のドーハの悲劇を彷彿とさせるあまりの悲壮感に、
いつもぶっきらぼうな弟が、珍しいほど優しくなって、

「お母さん、そんな沈痛にならんくても。
リビングでみんなとテレビ見たらええやん」

と声をかけたのだけど、母は、キッと顔を上げて、
すごい剣幕でどやしつけてきた。

「あんたらは、年寄りの気持ちがわからんのや!
私ら年寄りにとってはな、テレビは友達以上なんや!
朝の4時から、1日のすべてがテレビなんや!
それが、、こんな正月に壊れて、、、買い替えられへんし、
『ザワつく!金曜日』の大晦日スペシャル録画してたのに
見られへんようになったし、だいたい、アンタらが帰ったら、
私1人で淋しくリビングでテレビなんか見てられへんわ(泣)!
自分の部屋のテレビがつかんと、年寄りは終わりなんや(泣)!」

いや、お母さん、なんでそこで年寄りぶるの。
数日前には新宿の私のマンションに押しかけてきて、
美味しいもの食べまくって、歌舞伎町のマルハンへお遊戯しに行って、
クレイジーケンバンドのライブに出かけて、ノリノリやったやん……。
と、ツッコミを入れる間もなく、すっくと立ちあがった母、

「でも、テレビなんかどうせ機械なんやから、
接触の問題やろ? 叩けば直るんちゃうか?」

そして、液晶テレビアクオスを、ボッコボコぶん殴りはじめた。

「おおおお母さん、それ、昭和の対処法やから。いま、令和やから」

私も、咄嗟のことによくわからないことを言いながら
止めようとしたのだけど、
母は「思い込んだら飽きるまで」の勢いで突っ走る性格で、
一心不乱にアクオスを側面から背面から上部から下部から、
壊しているとしか思えない勢いでボッコンボッコン殴り続けた。

そのうち、家の中にいた犬2頭と猫2頭が、
騒ぎに目を丸くして母の寝室に集まってきて、
辺りがケモノだらけになったことで、
私にはアレルギー症状が発現し、

くしゃみは止まらないわ、
目から鼻からどぼどぼ水が滴り落ちるわ、
ぶん殴られるテレビから舞い散るホコリを吸い込んで、

喘息症状まで出てゼロゼロしはじめるわ、
もう何が何だかわからない状態に。

ひとまず、母の荒魂を鎮めるために、
弟がリビングで紅白を映していた大きなテレビをブツッと
切って取り外して、母の寝室に担いでいってつなぎなおし、

そして、リビングには、父の書斎に放置されていたヤニだらけの
ちっちゃくてリモコンの利かない、パソコンのモニターみたいな
古いテレビが置かれた。
さっきまでと打って変わって音がチャラチャラになったテレビで、
ふたたび紅白歌合戦が流れはじめた。
星野源っぽい人が歌っていたけど、もうだれも興味持ってない。

自室のテレビを取り戻したことで、落ち着きも取り戻した母は、
リビングのテレビも、正月明けに大きくて新しいものに
買い替えたいと言い出したけど、
私はそもそも注目すべき社会問題や事件がない限りは、
平時からテレビをつける習慣がないし、
弟夫婦も、AbemaとNetFlixとYouTubeしか見ていなくて、
テレビはアンテナ線すら繋いでいないそうなので、
「そこまでしてテレビ見るほどでもないし、これでいいんちゃう?」
という意見になった。

母は「そうか。テレビは年寄りしか見やへんのか、、、」
と淋しげな声。
いや、見るんだけどね、
どうしてもテレビが必要だとか、つけていないと不安だというほど、
テレビが生活の一部にはなってないという感じかなあ。
家族みんなでテレビを見るのは、毎年、この時期だけだけど、
出て来るタレントやアイドルについて詳しいのは、
普段からテレビを見ている母だけで、私や弟夫婦は、ぽかんとしていて、
母の説明で「へえ、そうなんだ」と知ることばかり、という感じだ。
これもジェネレーションギャップというのかな

なんてことを話していたら、とっくに紅白終わって、ゆく年くる年。
「あれ、紅白のトリ、誰やったん?」
などなど言いながら解散。騒々しい元旦。今年も四露死苦。

 

 

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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